第51回:常識という名の非常識 ~ 憲法における自衛隊は軍隊か
掲載日:2016年7月22日
執筆者:株式会社スクウェイブ
代表取締役社長
黒須 豊
先の参院選で改憲派勢力がついに3分の2を確保した。大きなニュースとして何度も取り上げられている。何故か国政の権限も無いのに都知事選においてすら、外交問題や憲法問題を争点化しようとする人が立候補する始末である。
さて、自国の憲法について、少なくても問題点があれば、議論すること自体は当然であるし、問題が明確になったならば、改善すべきであることに異論を唱える者は、単なるバカか、意図的に問題点を留保させる悪企みがあるとしか思えない。そんな当たり前のことを、大げさに騒いでいる政治家を見ると、正直なところ私は呆れてしまう。彼らは税金泥棒である。議論しないで騒いでいるだけなのだから。
ところで、憲法9条がとかく問題になるが、我が国の憲法は戦後一度も更新されておらず、時代にそぐわない点があるのは、9条に限定されることではない。環境問題しかり、石原慎太郎氏が指摘した憲法前文の文法ミスなど、どう考えても、改善した方が良いと、常識人なら思う点が少なくない。
しかし、憲法改正と言った瞬間、必要以上に大騒ぎになる。日本人の半ば常識として、憲法は軍隊保持を禁止しているものの、自衛隊は他国と同様に軍事力を有しているし、いざというとき、自衛限定であるにせよ、戦争行為も厭わない組織であることはほぼ全員が理解している。それでも、政治家は彼らを軍隊とは呼ばない。また、その根拠となっている憲法9条を変えたくない一心で、何故か、憲法全体を変えさせないと絶叫する輩も少なくない。
これらは、明らかに、世界の中で非常識である。世界の先進国で軍隊を持たない国家は存在しない。自衛隊を軍隊だと思わない国もない。また、先進国で、憲法を何十年もただの一片も更新しない国家も存在しない。
本当にバカげたほど低レベルで騒いでいて、いつまでたっても本質論に移行しないので、私は、若干、冷めて見ているのが実情である。
現行憲法を素直に読めば、一般的な常識人にとって、憲法上、軍隊は有しないと定義されているとしか言いようがない。だから、政治家(政権与党も)も自衛隊を軍隊とは呼ばない。でも、世界常識として自衛隊は軍隊であるし、日本国民の多くが自衛隊を必要だと考えている。
曲解としか言いようがない解釈論で、自衛隊は憲法が禁止する軍隊ではなく、合憲ということで歴代政府は通してきているが、いい加減、そろそろ、きちんと憲法問題を議論すべき時が来ているのではないだろうか。
現実問題として、日本人のほぼ全員が侵略戦争をする気は一切無い。私も全く同じである。しかし、自衛のために、一定程度強力な軍隊が必要であると確信している。永世中立国のスイスですら強大な軍隊を擁しているが、日本を取り巻く現在の環境を冷静に見つめれば、軍隊が不要などと言う者は、よほどのバカか、少なくても日本人では無いだろう。
ところで、間抜けな政治家や政治家気取りの者が、憲法を変えると徴兵制が導入されると短絡的に世論を扇動しようとするが、全くナンセンスである。今の時代に、日本にとって徴兵制は、まったく無用である。士気の高い軍隊が必須である。それは、警察などとほぼ同様の趣旨である。警察官を強制的に徴用する必要はないのと同じく、軍隊を徴兵する必要も全く存在しない。
現代の戦闘行為は、第二次世界大戦以前のような肉弾戦が有効な世界では無い。高度に訓練された少数精鋭の部隊が、ハイテクを駆使して戦う世界である。徴兵された素人は役に立たないどころか邪魔である。また、日本を守る目的であって、他国に海を渡って侵略するわけではないので、大量の軍隊も不要である。
その前提で、日本を守るためには、警察や消防が必要であるのと同じく、日本にとっても国家としてのセキュリティ担保のために、自衛軍は必要である。ただし、決して日本は自ら侵略はしない。この点について、大半の国民がコンセンサスを得ることは困難ではないと私は考えるのだが、政治家のみなさん、是非、税金泥棒にならないようにまともな議論を展開して頂きたい。
さて、最後に2つだけ、弊社の新しいサービスについて、触れさせて頂きたい。1つは、情報セキュリティ関連の診断・評価サービスである。現在、多くの企業がISMSなどを整備・運用済みである。しかし、それでもなお、情報漏えい等の事故は発生する。
各企業の常識として、ISMSを整備・運用していれば、問題ないと思っていたのだとすれば、まさに、常識という名の非常識である。情報漏えいなどの致命的な事故は、実際に起きている。国防上のセキュリティほどではないかも知れないが、自分の会社の情報セキュリティの脆弱性を見逃すべきではない。
今回リリースした情報セキュリティ関連サービスの1つである「情報セキュリティ意識レベル診断 - MSIS(Mind Set for Information Security)」は、社員個人個人の意識レベルを定量的に評価するフレームワークを有している。
個人単位で意識レベルは異なるものである。「本来は、こうすべきであるが、まあ、実態としては、そこまでしなくていいか」という意識のレベルは人によって必ずしも一致しない。その異なる度合いを可視化するためのサービスがMSISである。意識レベルが危険水域に達している人がどれくらい存在するのかによって、企業全体のリスクを推し量る材料となる。
もう1つ、紹介したいサービスは、「SLR on Cloud」である。いつでも、何処でも、何度でもITコストの妥当性についてシミュレーションできるオンラインサービスが、いよいよ登場した。しかも、極めてリーズナブルな価格で提供している。是非、各企業内の常識だけに囚われずに、自社のITコストを客観的に可視化して頂きたい。
そのうえで、自社のSLAなど、古く陳腐化している点などが明確になった場合は、是非、躊躇することなく、改善して頂きたい。決して、改善した方が良いとわかっているのに、手を付けない日本国憲法の様な扱いをしないで頂きたい。