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第4回:「傍から見ると異質なIT部門」

第4回:「傍から見ると異質なIT部門」

掲載日: 2004年7月12日
ゲスト: アサヒビール株式会社
管理本部 IT部 部長 奥山 博氏
インタビュアー: 株式会社スクウェイブ
代表取締役社長 黒須 豊

​黒須:奥山さんはずっとITにいらしたわけでなく、他の色々な業務も経験されてきましたね。ユーザーの立場で見ていたITと今とでは視点が変わったと思います。その辺からお話しいただけ ますか。



奥山:来た当初、IT業界には通常のビジネス部門の世界とはまったく違う、独特な常識がいろいろあることを知り、驚きました。



黒須:どこが違いますか?



奥山:まずコストについての意識の違いです。例えば経営などIT以外の世界では10%も予算から違うという事はまずありえない話です。うちの会社では再稟議となり、一から計画を見直さ なければなりません。でもITの世界では、例えば50%狂っていてもしょうがないという雰囲気が残っています。コスト構造も不明瞭に感じられ違和感を覚えました。



黒須:入社以来、どういう業務に携わってこられたのですか?



奥山:外食→営業→マーケティング→チャネル戦略→ITです。てんでばらばらです(笑)。



黒須:色々な仕事をしてこられたわけですが、IT部門とそれ以外とで、コスト意識以外に違うもの はありますか?



奥山:時間に対する感覚です。普通、時間(期限)と いうのは絶対ではなく、状況に応じて変化するはずと思いますが、 IT部門では開発やテストにこれだけの時間がかかります、と自部門 の都合で決め込むケースが多いようです。これは違いますね。時間というのは自分達が決めるのではなく、お客様が決めるものですか ら。



黒須:本来はITも社内のユーザーニーズに合致する体制を作らなければいけないわけですが多くの企業でできていません。 奥山さんがITに来られて最初に手がけたことは、何ですか?



奥山:IT部門の人のコスト意識、顧客意識、時間に対する意識など、元になる判断基準を変えて いくことから始めました。



黒須:部門内の抵抗はなかったのですか?



奥山:今までと違うことを言うわけですから、素人が何も知らないくせに…と思う人もたくさんいたでしょうね。



黒須:ある意味での反対勢力がありながら、どのように改革されたのですか?何か秘訣はありますか?



奥山:特別にはありません。ただ私が言っていることは私の上(=経営者)の思いに近い話なので、上の方にもバックアップしていただきました。折に触れ部員に話しをしていただいたり。思いきりやれ、とフォローの風を送っていただいたからこそ、変えていくことができたのだと 思います。



黒須:すばらしいですね。上からのバックアップがあってもうまくいかない企業も多いですから。御社は理解してくれる社員が多かったのかもしれませんね。



奥山:確かに、多くのIT社員に考え方を変えなくてはという意識が元々からあったのでしょう。また、当時
100%子会社であった情報システム会社に、外部の人材(文化)が入ったことも大きかったと思います。



黒須:IT部門独特の文化を外の世界で当たり前の形にしましょう、という改革を行ってきたわけですね。昔は「ITはなぜこんな事ができないのか」と思っていた事で、ご自分がIT部門になって初めて「あ、実際に難しいんだ」と感じた点はありませんか。



奥山:外にいた時は、ITはなぜこんなにお金がかかるのだろうと思っていました。 毎年何十億も(笑)でも実際は何十億も新規に使っているわけじゃなかった。半分強がリース料などの固定コストだった。研究開発投資などとは構造が基本的に違うものなんですよ ね。こういう話は社内で積極的にするようにしています。



黒須:固定的にかかっているコストをいかに圧縮するかが重要になってきますよね。ITには経営層に対する社内コンサル的な役割があると思います。IT部を意識改革する際、役員にサポートしてもらったとおっしゃっていましたが、逆に経営層の方々へのITの啓蒙はどのようにさ れていますか?



奥山:(IT部門は)世の中のベストプラクティスに触れる機会が多いので、気付いたことがあればその都度上に伝えています。経営の方々に「ITを理解してください」と言うのではなく、ある問題が起きたときに「これは ITを使うと解決できる」というセンスを身につけていただきたい。ですから、見識がある外部の方の話を聞いていただく機会を設けるようにしています。



黒須:企業によっては面倒だと敬遠さ れることもありますが、御社の経営層の方々は積極的に参加されているということですか?



奥山:そうですね。皆さん前向きですから、やり甲斐はあります。



黒須:それは恵まれていると思いますよ。経営層と乖離してしまうケースも少なくないですから。



奥山:理解が深まった分、昔のように単に「コストを削減しろ」とかではなく、もっと次元の高い要求がきます。だいぶ難しい玉が飛んでくるようになりました(笑)。



黒須:理想に近づいてきているということですね。ところで奥山さんは以前ナレッジマネジメントについて講演されていましたよね。御社で具体的に取り組んでいることはあるのですか?



奥山:経営層とミドル層では、常時必要とする情報が違うということに対応するために、経営者専用の
ポータルを別途作りました。経営をコントロールする際に必要な要素・情報は何かとい うことをIT部門の立場を踏み越えて考えました。



黒須:導入されてどれくらいになるのですか?



奥山:まだ2ヶ月です。重要な意思決定は少数の方々が事前にするのではなく、広く会議室で役員同士いろんな意見を交えながら行って頂きたい。そのためのポータルです。



黒須:情報共有ですね。



奥山:部門の主要な情報を常に確認することによって、担当部門以外の理解も皮膚感覚で深まります。その土台の上で個別案件に対して十分に意見を出し合う、ということの役に立てば良いと思います。また
経営のスピードを速めるためは、早いタイミングで戦略変更をするべ きです。システムも変化を予兆段階で捉え、先の手を打つことに役立つものである必要があります。単にポータルですが、非常に奥が深いと感じています。



黒須:企業にとって、とても大事なことですね。
 さて、ここからは少しプライベートな質問をさせて下さい。奥さんはスマートで洗練された印象ですが、どのような趣味をお持ちですか?



奥山:花の苗などを寄せ植えして吊す「ハンギングバスケット」に毎年チャレンジしています。 直径1m位の花々のくす玉みたいなものを作って、今年はうまくいったとか喜んでるんですよ。野菜も庭で育てています。トマトなどは脇芽をとって上の芽(成長点)を伸ばすのですが あるとき家内が誤って成長点を取ってしまいましてね、このときは呆然としました。その 苗は別の場所に植え替え違う苗を買ってきたら、と言う人もいました。結局、決心がつかず そのまま何日か水をあげていたら、自分で違うところから芽を出しました。今は元気にたくさんの実をつけています。人と苗を一緒にするのは失礼な気がして、あまりこういう話はしないのですが、部門の人材についても「どうもダメだ」という状況になっても、自分に伸びる意欲さえあれば全く違う側面から成長してくるもので、周りが性急に判断してはいけないと思いましたね。また、常に手を入れて育てていくことは、上の人にしかできない大事な義務だと思っています。



黒須:なるほど。野菜も人も、短絡的に移し替えるべきでないということですね。 今も奥様と野菜を育てているのですか?



奥山:はい、また成長点を摘み取られると困るので、役割分担を明確にしてやってます。



『今回はご多忙の折、奥山氏にお時間を頂戴しました。ありがとうございました。』

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