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第13回:対談「外販指向型IS子会社への成長の軌跡」

第13回:対談「外販指向型IS子会社への成長の軌跡」

掲載日:2004年12月16日

ゲスト:丸紅情報システムズ株式会社
代表取締役社長 京田 一良 氏

インタビュアー:株式会社スクウェイブ 代表取締役 黒須 豊

『今回は、近年IS子会社の外販に成功された京田社長にお話しを伺いました。』



黒須:まずは京田さんのご経歴からお話しいただけますか?



京田:私は高校2年の時(40年前)にコンピュータに出会いました。コンピュータはソフトによって 機能が変わりますね。ソフトを操って色々なことができるのではないかと思っていました。大学が理系だったとこともあって、私の同級生は皆メーカーに就職していますが、そんな中 で私が商社を選んだのは、学生の目から見ると、商社は全部の業界に対応していて、何でもできるのではないかと思ったのです。



黒須:京田さんの幅広いニーズに商社が応えてくれると感じたのですね。



京田:入社後は、事務管理部に配属され、社内コンピュータシステムの開発・運用・保守に携わり ました。日経新聞社のNEEDS/TS2という経済予測を商用サービスで行うプロジェクトに 参加した後、初めて自らの希望で日本経済研究センターに出向させてもらいました。ここで 初めて経済の分野の目が開かれたのです。このまま丸紅の調査部に行くと思っていたのですが、その頃、丸紅初のオンラインシステムを構築することになり、特注端末機の設計・ 開発に参加しました。これが本格的に自分でシステムを作った最初の経験です。ファームウェアを作る作業が大変でしたね。



黒須:その時の京田さんの職種はSEだったのですか?



京田:そうです。大学時代にコンピュータをやっていた関係で、入社してからはプログラミングより もSEとして使ってもらえたのはラッキーでした。その後、シドニーに5年間駐在しました。 EDPで行ったのですが、たまたま現地の経理課長が辞めたこともあって、経理課長、審査 課長、EDP課長を兼任しました。要は自分でシステムを保守しながら、ユーザになっている わけです。そこで、連結決算のレポーティングパッケージを丸紅本社に送るのに、コンピュ ータからアウトプットされたままでは使えなかった等、ユーザの不便さを目の当たりにしまし た。これはものすごくいい経験でしたよ。 帰国がちょうどNTTが民営化される時で、各商社は情報産業本部というのを作っていまし た。迷った末、その情報産業本部(営業部門)に行くことにしたのです。当時丸紅はアメリカ のタイムシェア社との合弁で国際情報処理を手がけていました。その子会社のTYMNET 社のパケットネットを延長して、そこで国際VANをやろうということになりましたが、ものすご い赤字になってしまいまして(笑)。責任を感じて出向させてもらい、5年でようやくブレーク ・イーブンが来ました。 アメリカ人と合弁会社をやっていて一番面白かったのが、シリ コンバレーに8ヶ月出張したときです。アメリカのネットワークは 7ビットでしたから、日本語はみんな字化けしてしまう、そこで漢 字・カタカナ(ダブルバイトキャラクター)とは何かを片言の英語 でレクチャーして、日本向け製品開発をしました。またシリコン バレーのベンチャーが企業として立ち上がっていく様を目の当 たりにしたのがいい経験でしたね。 その後本社に帰ってきて、情報システム部長になった当時一 番感じたのは、国内外事業会社の経理システムがバラバラの ままではいけないということです。連結経営を目指すのは会社 の方針でもありまして、そのためにはシステムをプラットフォーム化しないとだめだと。 経理システムは他のシステムと絡んでいて複雑すぎるという理由で、代々のシステム部長が 再構築するのを避けて通ってきたのです。当時たまたまERPが芽生え始めてきていたこともあ り、変えよう!と決心しました。当時、三菱商事さんが営業系でSAPを使おうと検討されていたの ですが、丸紅の方はまず管理系でSAPを入れようと。でも、ドイツのAP本社の開発責任者に会って話しをしたら、「商社」を知らないわけですよ。SAPも当時メーカー系から入っていましたから商社機能なんて何もないのです。“商社機能とは”をレクチャーしました。それを理解してもらい 将来のバージョンで商社機能を取り入れるというコミットを取った段階でアドオンしようと決めまし た。膨大なアドオンになったのですが、今SAPのGT(Global Trade)には、このrequirementが入っています。



黒須:歴代の方が避けて通ってきた新会計システム導入の際、具体的にどのように社内を動かし たのですか?



京田:基幹システムを変えるわけですから、システム部単独で稟議をあげても経営陣に理解してもらえません。経営企画・経理・情報システムの共同稟議にして、管理部門の総意だという点を強調しました。システム部内では、「これをやらないと先がない」という危機感を煽りまし た。当時の経理部長も意気投合してくれましたし、経営企画部長も「京田が言うなら」という ことで乗ってくれたのです。



黒須:それまでに京田さんが良い人間関係を構築してきたことが成功の要因ですね。



京田:そうですね。組合専従もやりましたし、当時「21世紀ビジョン委員会」という若手の委員会があったのですが、それにも入っていました。大きな組織の中での横のつながりがあったので動きやすかったということはありましたね。



黒須:経理改革は多くの会社さんでやられていますが、IT責任者が主導で成功している会社は少ないです。その中で御社は珍しい成功例ですね。



京田:当時考えていたのは正に「連結経営」です。国内外の事業会社に連結経営のプラットフォ ームを作り、(技術的なチャレンジだったのですが)ネットワークでつなげて当時完成した多摩データセンターで世界を一極集中管理する。これは商社の間では無謀だと言われました が、ちょうどネットワークが進み始めたときで、アメリカのテキサス・インスツルメンツさん等がやり始めていたし、良いタイミングだったと思っています。



黒須:もともと事業の経験もあって、コーポレートのITをやられて、今は事業トップでいらっしゃって・・・流れが非常にきれいですよね。



京田:私は本社にいた時間と、出向していた時間とがほぼ半々なのです。色々な上司に仕えていきながら、自分が思っていることをどうやって通していくかを学ぶことができました。組織の中で仕事をしていく上では非常に大事なことですよね。これがないと、思っていても 実現できなくて、フラストレーションが溜まる一方ですから。



黒須:御社は2000年4月から外販を手掛けていらして、今年の中間では外販率が50%を超えまし たね。



京田:毎年10%ずつ伸びたんですよ。色々な要因がありますが、まず社内の皆がその気になってくれたこと。外部環境としては、2001-2002年に丸紅の業績が落ち込んでIT投資を絞ったこと。減った分の仕事をしていた人達が全部外に向けられたのです。その時に私の後任のシステム部長も優秀な人を外へ出すのに目をつぶってくれたこと。それと普及し始めたERP の要員を持っていたこと、多摩データセンターが完成して、優位なポジションにあったことで すね。



黒須:数年前に「外販で3割を目指してください」とお話し申し上げましたが、正直なところ、私もこんなに見事に外販比率を伸ばすとは思っていませんでした(笑)。



黒須:次に今後のビジネスの展望についてお話しいただけますか?



京田:ITの技術革新と普及は著しく、今の業態では5年持たないと危惧しています。規模が3000人以上のSIerは、それなりの生き残りの環境はあると思います。また派遣に徹する会社は あまりビジネスモデルを変える必要はないでしょう。 我々ぐらいの規模が一番周りの環境変化によって業態を変えざるを得ないのではないかと 思っています。ユーザ系の良さをいかにお客様にアピールできるかが大事ですね。うちの良さは、例えば 20年間丸紅のある部門のシステムを見ていて、業務ノウハウがものすごく深い。こういう人 達が技術とノウハウをマッチさせて、お客様に自ら改善提案ができることです。お客様が事 業計画を相談できるビジネスパートナーですね。できるだけ自分のコアビジネスに特化したい、ITは変化が激しいので自分であまりリソースを持ちたくないとなると、お客様はITビジネ スパートナーを選ばざるを得ないですよね。そこでうちが選んでもらえるようなポジションになれるかどうかです。



黒須:成功談をたくさんお話しいただいたので、次は失敗談があればお話しいただけますか?



京田:商社系ということで、今までに海外から何度か新しい ビジネスのネタを持ってきて日本に植えつけようとしましたが、うまくいくケースは少ないです。いくら製品が良 くても、事業には成熟のタイミングってありますね。技術者上がりなのでいいモノをみるとすぐ惚れ込んで日 本に持って来るのですが、それはまだ日本で育つ環境にないのです。これはこれでいい経験をしていると思い ますが、二度と同じ失敗はするまいと肝に銘じています。失敗は新しい理由であればやむを得ないと。ただアメリカの人達は新しいベンチャーの製品に対して比較的抵抗なくチャレンジするのですが、日本はダメでしょ。 この違いの一番の理由は労働環境だと思います。アメリカの人達は、リスクがあっても新しいベ ンチャーのものを使って成果を上げればどんどんプロモートされるし、だめなら往々にして会社を 移ってまたやり直すので、ベンチャー製品に対して抵抗がないのです。ところが日本のシステム の人は同じところに10年20年ずっといるから、1回失敗すると後に残ってしまう。だから皆さん非 常に慎重で、まずはアメリカで実績があるものを望みますし、日本ではどこの会社が使っている のだと言う話しにすぐなりますね。自分でその製品に対する絶対的な評価をしないですよね。日 本でベンチャー製品を使うのは実力があってチャレンジする余裕がある先進的な企業だけなのです。そういうお客さんを見つけることは大変ですよ。



黒須:なるほど・・。見事な分析ですね。



京田:日本ももう少し余裕を持って新しいものを受け入れて、ダメなら次、という風になってほしいですね。



黒須:リスクを覚悟でチャレンジすることは、追いつくのではなく、本当の一番になるためには必要ですよね。



黒須:次に、京田さんの趣味についてお話しいただけますか?



京田:とにかく体を動かすことが好きで、スキーには毎年行っています。あと、旅行も好きで学生時代からよく行っていましたが、パックツアーは絶対に使いません。家内も「あなたと旅行に行くのが一番楽しい」と言ってくれますしね。



黒須:それは幸せですね(笑)!



黒須:最後に、丸紅情報システムズならではのアピールをお願いします。



京田:例えば旅行へ行った時にでっかい有名ホテルに泊まるか、それとも中堅で心が休まる旅館を探すかという場合、私は後者なんですよ。うちは、中規模だけど、お客様と正に一体となって事業をサポートできるようなシステムを考えていきたいのです。これが丸紅情報システムズの一番の良さだと思っています。実際お客様にも「君のところとうちの連中はすごく話が合うんだよね」と言われます。 お客様と同じ視点で事業を考えているからこそですよね。



黒須:本日はどうもありがとうございました。



『今回はご多忙の折、京田氏にお時間を頂戴しました。ありがとうございました。』

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