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第10回:書評 - 「サーバント・リーダーシップ」優れたリーダー像

第10回:書評 - 「サーバント・リーダーシップ」優れたリーダー像

掲載日:2004年10月18日

執筆者:株式会社スクウェイブ
代表取締役社長 黒須 豊

私は過去数年来、週刊東洋経済の「ブックレビュー」コーナーにおいて、書評を不定期に担当させて頂いている。今回は、2004年10/16号掲載の「サーバント・リーダーシップ」について話をしたいと思う。

本書はPHP研究所から発行されている翻訳書であり、原書はJamesC.Hunterが著したリーダーシップの理想像を描いた本である。本書のエッセンスとして、まず、以下の定義が目を惹く。

「リーダーシップとは、皆に共通の正しいと認識されたゴールに向かい、一生懸命働くように人々に影響を与えるスキル」

ここで、スキルは「権力」ではなく、「権威」であるとする点がポイントである。権力は他人を力で強いるのに対して、権威は自分個人の影響力によって、自分が意図するように他人を快く行動させるスキルである。

自戒の念を込めて言えば、そんな凄いスキルを有したリーダーは果たしてどれほど存在するのだろうか。大企業の経営者から有名大学の教授に至るまで、果たして、何人がこのようなリーダーと呼べるだろうか。

権力を使わずして、権威によって人を動かすことができれば素晴らしいと思うが、いきなりそんな大人物になることは容易ではない。はっきり言って、そんな器じゃないリーダーは世の中に溢れている。

私は、サラリーマン時代に多くのリーダーの下で仕事をしてきたし、また、過去5年間は、毎日のように顧客企業の経営責任者をはじめとする多くのリーダーたちと接してきた。それは実業界に留まらず、大学関係者や医療関係者に至るまでおよそリーダー的な立場にある人物と多数接してきた。

このような経験を通してみても、およそHunterのいうような偉大なリーダーは多く見積もっても数名程度しか思い当たらない。しかし、その他の多くのリーダーたちも、一部の例外を除いて、皆立派な方々である。事実、日本は際立った経済先進国であり、その一翼を、そのようなリーダーたちが、現実に担っているのである。

では、ごく一握りの秀逸なリーダーとその他大勢のリーダーとは具体的に何が違うのか。私の経験から感じる偉大なリーダーたちに共通するものは、部下や後進に、「この人に着いていけば間違いない」と思わせる雰囲気を身に纏っていることである。この雰囲気こそ、まさに権威に直結するものだと思う。

そのような雰囲気を身に纏うためには、私はしてはならないことが1つあると思う。もちろん、失敗の責任を取らないリーダーは論外である。その上で、部下にやらせるなら、リーダーは成功させる施策を打たなければならないと思うのである。指導してやらせる以上、リーダーは死んでも成功させる術を持つべきなのだ。さもなくば、断じてやらせるべきではない。

私は権力を使うなと言うつもりは毛頭ない。権力は責任と相俟って必要である。しかし、権力で人を動かす以上、事前に成功する施策を一緒に考えて、それを適切なタイミングで実行し、成功体験を共有することこそ、偉大なリーダーに近づく一歩ではないかと思う。

やらせてみて失敗したら、「今回は残念でした。また、がんばりましょう」というような対応は、一見優しい指導者として歓迎されそうだが、失敗を見逃すリーダーは、実は自分の責任逃れを行っているに過ぎない。

失敗を恐れて何もしない者はリーダーの器ではない。しかし、やる以上必ず成功する術を一緒に死に物狂いで考え抜いて実行する努力が必要ではないだろうか。今回書評した本は、自戒の念を強くさせるに十分なものであったが、多くのリーダーのみなさん、いかがだろうか。

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