第64回:「リスキリング」について

第64回:「リスキリング」について

掲載日:2022年10月13日
執筆者:株式会社スクウェイブ
エグゼクティブ・ディレクター 
三宅 晴之

最近新聞等で話題となっているので目にする機会も多いと思うが、言葉の意味は「学び直し」である。IT業界ではちょっと前からIT人材の不足が叫ばれている。その背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)対応やセキュリティ強化、AIやメタバースをベースにした新商品開発のイノベーションなどがあるが、進化が早すぎて一般人から見ると世の中の変化についていけない時代となってきている。
しかし企業としては何とかしないといけない。先行する企業は体制をつくり、施策実行している。例えば、旭化成㈱のデジタル人材を24年度までに10倍の約2500人に、日本航空㈱のグループ全社員3万人にデジタル教育を開始、キリンホールディングス㈱の「キリンDX道場」などがその例であろう。

政府としてもコロナ禍やマイナンバーカードで露呈した日本のITの遅れに対応するため、6月に「骨太の方針2022」を閣議決定し、その中で、人への投資の施策パッケージを新たに創設した。これを受け10月の首相所信表明演説で成長産業への労働移動を促すリスキリング支援に5年で1兆円を投じると表明された。
日本経済新聞によると、「人への投資」が多い企業は、そうでない企業に比べ、業績も良いし、株価も高いそうである。今後情報開示が進むと、ますますその差が出るように思われる。
また東京大学は鹿島建設㈱、ソニーグループ㈱、三菱電機㈱、DMG森精機㈱、㈱丸井グループ、㈱リクルートの6社と協力し、工学の専門教育を受けられるプラットホーム「メタバース工学部」を9月に開講した。社会人向けのプログラムでは人工知能・起業家教育・次世代通信などの最新の工学や情報をオンラインで学び、「リスキリング」を支援するとのことである。

 人的資本の強化は官民一体となった活動であり、その手段としての「リスキリング」は今後ますますクローズアップされるものと思われる。必要なIT人材は不足しているが、ITによって不要となる仕事もあり、簡単な事務等の仕事はITに代わり、雇用が失われる。逆にAIなどの領域を中心に新たな雇用が生まれると言われている。そういう意味では職種転換のための「リスキリング」が必要なのではないだろうか。

 私も以前教育を担当した経験があるが、景気の良い時には人材育成は重要であるという方針に従い、教育プログラムを充実させ、忙しくて受けたくないSEを引っ張り出し、スキル強化を図ってきた。しかし、景気が悪くなると、費用削減の最初のターゲットにされ縮小を余儀なくされた。今後IT人材の育成が強化されることを祈る。何といっても、企業は資源としての「人」が一番重要なのであるから。

 さて、ここで3つのことをひとり言として言いたい。
1.誰もがIT人材になれるわけではない。向き不向きがある。
IT人材、DX人材とはどういう人材であろうか。スマホも満足に使いこなせないのでダメだと思っているおじさん方はいないだろうか。パソコンが普及したときにITリテラシーの問題があった。その時は大丈夫だったけど、今度はその仲間に入りそうだという読者はいないだろうか。ハードルが高いと思っている人には2種類ある。もともとITが苦手な人と、ITには興味があるがいつのまにか技術がだいぶ先にいってしまい、追いつくのをあきらめた人である。前者は不向きな人として、残念ながら強化人材からは外さざるを得ないが、。何をやるにもIT技術だけではなく想像力・応用力、企画・計画力、問題解決力、調整・折衝力、経験・業務知識などが必要である。したがって、「リスキリング」により最低限の技術知識を身につけた上で人材として活躍されることを希望する。もちろん優秀な若手もいるが、若手だけの人材グループでは方向性が定まらないような気がする。旗振り役も重要である。

2.「リスキリング」の結果を活かす場が必要である
 これまでの教育は知識・スキルを学ぶ教育であり、教育中寝ていた人も真面目に取り組んだ人も結果はあまり変わらない。なぜなら教育を活かすところまで、あまり考えられていないからである。もちろん教育により個人のレベルは上がっていると思うが、活用の場がなければそのうち忘れてしまう。ではどうすればいいか。DXプロジェクトのようなものがあれば、そこに参加してもらうのが一番である。しかしそれだけではなく、学んだことをどう活かすか宣言してもらい、適宜上司あるいはプロジェクトリーダが確認することである。思うように目標が達成できなくてもフォローすることが重要である。現職場で適当な活躍の場がない時は、異動も含め、上司が対応すべきである。そのための「リスキリング」であるのだから。

3.「リスキリング」はITだけではない
 リスキリングは組織的にIT人材を育成して、事業化するということで定義されているが、他の技術(例えば製品設計)や営業等の人材も人的資本である。技術の進歩が著しいのはITの世界だけではない。量子コンピュータ、バイオ、医療技術、CO2削減技術など枚挙にいとまがない。その企業として必要な技術を「リスキリング」により強化していく必要がある。さらに技術だけでなく、営業もテレワークやITにより従来とは様変わりしてきている。「リスキリング」の良い機会である。このように「リスキリング」の範囲を拡大すれば良いと思う。

最後に手前味噌になるが、「リスキリング」について当社スクウェイブでも以下の点でお役に立てればと思う。一つはIT人材育成のための「リスキリング」提案の作成である。もう一つは個別スキル育成のための教育であり、セキュリティ教育、ITガバナンス、システム監査手順等が可能である。ご興味がございましたらご連絡いただきたい。
※敬称略

tatemae34_data.GIF
tatemae46-2.jpg
tatemae35-1.gif
tatemae35-2.gif
tatemae45-1.jpg
tatemae45-2.jpg