第11回:対談「事業部門と一体となったITマネジメント」

第11回:対談「事業部門と一体となったITマネジメント」

掲載日:2004年11月5日

ゲスト:株式会社リクルート
フェデレーションエグゼクティブオフィサー
FIT 藤原 章一 氏

インタビュアー:株式会社スクウェイブ
代表取締役社長 黒須 豊

​​『今回は、リクルート内でITの生え抜きであるゲストにお話しを伺いました』



黒須:まず、藤原さんのご経歴を簡単にお話しいただけますか?



藤原:私は経済学部出身ですが、これからは文系のSEが重要になってくるだろうということで、最初はSIer系のシステム企業に2年ほど在籍しました。そこでコーディングから、システム基本設計・開発をやりました。その頃リクルートがRCS事業とI&N事業を立ち上げて、コンピュータとネットワークの事業に進出することになり、若手の技術者を求めていました。これが 転職したきっかけです。17、8年前の話です。初めは関西のRCS事業部でコンピュータの 導入・サポート・パッケージソフトの準備等をやっていました。その後東京の情報システム部に来て、現在に至ります。



黒須:リクルートの中で、ITの生え抜き的な存在ということですね。コンピュータと関係のない部門には配属されたことはないのですか?



藤原:ないです。ただ、リクルートの場合、システムの開発=商品の開発というケースがほとんどです。事業部門に席を作ってもらって一緒にサービスを作る仕事が多かったですね。



黒須:その点は普通のユーザー系企業とは違うところですね。商品の開発と同時に、いわゆるIT部門の業務もされていると思いますが、FIT(Federation of ITの略)の体制について教えていただけますか?



藤原:FITができる4年前までは、ITの機能は分散していました。リクルートにはいわゆる情報システム部の他に、ISIZE系を担当するISIZE局や、情報誌を作るシステム(制作系システム)部隊等がありました。それらを一つに集めて、各事業単位に割り直し、より機動的に動かせる体制を目指したのがFITです。スタッフはFITに所属しながら席を事業部に置き、事業部の人間と一緒に戦略を検討しながらシステムを作っていくという点が一番特徴的だと思 います。



黒須:まさに「federation」ですね。



藤原:人事権はFITにありますが、通常の業務はずっと事業部と一緒です。



黒須:FIT全体で何人位いらっしゃるのですか?



藤原:全部で150人位です。約100人が事業部に席を置き、約50人がFITセンターとFIT企画室に所属しています。FITセンターは全社横断のシステムやネットワーク・インフラの構築・管理をしています。FIT企画室の役割は大きく分けて4つあり、1.コストマネジメント、2.投資マ ネジメント・効果測定(各事業のビジネス戦略で、システムを使ってどのように効果を出すか)、3.開発運用統括(開発の生産性をどう上げるか)、4.人材・パートナーさんのマネジメン ト・社員教育になります。



黒須:FITの部員の教育も、幅広くて大変そうですね。一人あたりのコストはいくらくらいですか?



藤原:年間で数十万程度です。OJTが中心になっていますから、そんなに多くないですよ。



黒須:FITはリクルートにとってどのような組織であるべきだと思っていますか?



藤原:FITは事業戦略を実現するためのスタッフ組織です。ご存知のようにリクルートの事業は ネットが中心になってきています。事業を動かすという意味で主役かサポート部隊かといえば、FITは後者ですが、言われたことをやるだけではもうダメだと感じています。



黒須:藤原さんがこれまで経験した中で、最も困難だったこと、また達成感があったことを教えていただけますか?



藤原:難しい質問ですね・・・。



黒須:困難だったことなんてなかったですか?



藤原:いえいえ、あまりにもありすぎて(笑)。一番困難でもあり面白かったのは、やはり事業の商品そのものを作っていく仕事ですね。リクルートの場合、色々なことをやりたがりますし、皆が世の中にとって意味のあるサービスを提供したいと強く思っています。いかにして皆の意見をシステムに集約させて世に出すかを、事業トップと喧々諤々やって方向性を決めるのですが、なかなかスムーズに行きません。実際にシステムを作る作業はパートナーさんに お願いするのですが、パートナーさんにうまく伝えるのも難しいです。徹夜の作業が続くこともありますが、利用していただいたお客様がサービスを通じて、例えばいい転職ができたとか、良い商品がみつかったと喜んでいただくと達成感が湧きますね。同時にある意味で社会インフラになってしまったという責任の大きさを感じます。システムトラブルが起きると、すぐに「2ちゃんねる」等にスレッドが立って色々と書かれてしまいますから。学生さんに「私の人生の大切なところなのに、今使えないとすごく困る」といった切実な声もいただきます。



黒須:それはリクルートさんならではですね。お客様の数が膨大だから大変ですね。



黒須:次に、今後取り組んでいこうと思っていることについてお話しいただけますか?



藤原:立場上、私はリクルート全事業の課題や状況を早い段階で入手することができますし、投 資マネジメントを始めたことでビジネスの捉え方も非常に勉強させてもらっています。これをもっと若い人達に伝えたいと思っています。ある意味スーパーマンを求められるじゃないですか。ITがわかって、ビジネスもわかって、高い視点で物事を見なくてはならなくて・・・。人材育成は、今後の重要な課題ですね。最近の若い人はキャリアに対して意欲的というか 早く結果を出したい気持ちが強いと思います。営業と違って、ITだと結果を出すのにどうし ても時間がかかってしまいますので、焦りもあると思います。ビジネス的な観点を持ちつつ ITがわかるスタッフを作るのは非常に難しいです。



黒須:事業が成功すればFITの貢献も自ずと明らかになると思いますが、事業部側からのFITの 評価はいかがですか?



藤原:FITの評価は最近非常に上がってきておりまして、もっと意見がほしいと言われます。6月に各事業責任者全員と話したのですが、ITに対する期待がものすごく高くなってきていて、共同で事業を作っていく存在として求められていますし、そうならないと会社が強くならないと実感しています。事業部だと、どうしても短期的な視野になりがちなので、FITの中期的な 視点や他事業のノウハウを持ってきてほしいなど、かなり期待されています。



黒須:なるほど。FITは横断的に各事業を見られる立場ですからね。



藤原:もともとはインターネットビジネスがどんどん増えていく中で、開発(作る力)を上げて欲しい というのがFITに対する一番の要請でした。ただ(当然のことですが)開発力を上げるとコス トも上がってしまいました。それで、コストマネジメント・ITマネジメントをしっかりやりましょう ということになりました。現行システムの問題点等も、半期ごとにレビューしています。



黒須:システム周りのコストはFITと事業部どちらが負担するのですか?



藤原:基本は事業部負担です。ただ、コストの予測責任やマネジメントはFITがやっています。IT マネジメントのベースが去年くらいからようやく軌道に乗りました。今では、まだ要件が固ま っていないうちにビジネスを立ち上げたいといわれると、「期間はXXなので平均生産性から 見るとXXの機能が作れる」といった議論もできはじめています。すごく進化したなあと思い ますよ。



黒須:可視化ができて、経営層や事業部とのコミュニケーションも良くなったということですね。 素晴らしいですね!



黒須:最後に藤原さんの趣味について聞かせてください。



藤原:その質問が一番緊張します(笑)。ありきたりですが、ゴルフが好きです ね。人と話しをするのが好きなので、 飲みに行くのも好きです(笑)。



黒須:趣味と仕事を完全に切り離す人とそうでない人がいますが、藤原さんはどちらのタイプですか?



藤原:仕事と私生活の境界は曖昧ですね。多分リクルートの人間は皆同じだと思いますよ。仕事が好きなので(笑)。ただ、仕事がどうしても長期的で、守り系が多いので、趣味の方は瞬間的に楽しめるもの、発散できるものに走りがちですね。スポーツ以外では、歴史小説を読むのが好きです。例えば、同じ幕末の話でも、焦点を充てる人物が変わると全く違った見方をすることができるので、面白いです。だいぶ前になりますが「竜馬がゆく」を10人くらいで読み、「竜馬飲み会」を催しました。皆で好き勝手な感想を言い合って楽しかったですよ。人によって色々な見方がありますからね。



黒須:楽しそうですね!本日はありがとうございました。



『今回はご多忙の折、藤原氏にお時間を頂戴しました。ありがとうございました。』

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